今回、『un』の収録曲の中から、ボーナス・トラックとして収録されている「ミラクルベリー☆」を、ニットの全身衣装として再生してくれた力石咲さん。「ミラクルベリー☆」は、サード・シングルの『レゲエX’mas』の収録曲で、『un』にはリマスター・バージョンとして特別収録したもの。この曲を選んだ理由や、ニットの全身衣装としてカイタイしていった過程を、力石さんのアトリエにおじゃましてうかがってきました。

コバユー: 今回、「ミラクルベリー☆」をカイタイしていただきましたが…。

力石咲: どうですかね。

コバユー: 感動して、言葉がありません(笑)。

力石咲: あはは(笑)。

コバユー: 咲ちゃんは、どうしてこの曲を選んでくれたんですか?

力石咲: 「ミラクルベリー☆」は、歌詞を見てパッとイメージが浮かびやすかったの。着ぐるみっぽいものを作るのが好きだから、歌詞に「ライオン」とか「ベリー」とか出てきて、モチーフとして作りやすそうだし、物語が浮かんできたから。しかも青いライオンでしょ。

コバユー: そう。

力石咲: 青いライオンは珍しいなと思って。作ってみたくなりました。

コバユー: このライオンは、コバユーがイメージしてたものと結構近くて、えっと…私の中の青いライオンはお母さんのライオンなんだけど、なんかお母さんの風格ありますよね。

力石咲: おおー。本当?変な顔だったらどうしようと思ったけど(笑)。トラの衣装を作ったときもそうだったんだけど、なんか、変に表情が出るのね。でもそれって、最後に目をつけてみないとわからなくて…。それがちょっとドキドキした(笑)。


この日はパンダのニットスーツを着ていた力石さん。

コバユー: 最後に目をつけるの?

力石咲: そう。最後に、目をね、じっくり位置を決めながらつける。

コバユー: じゃあ、一番最初に作り始める場所はどこ?

力石咲: いつも足から作り始めるの。

コバユー: え。じゃあ、靴から?

力石咲: ううん。靴じゃなくて、ボディのかかとのところから太ももまでをまず作る。で、次は腕を作って、その次はお腹とか、そんな感じ。

コバユー: この、ライオンの鼻も面白いね。なんか見たことあるマークだけど…。

力石咲: これね、実は三菱のエンブレムなんだけど…(笑)。普段からこういうガラクタとかとっておくの。普通に鼻作るよりおもしろいじゃない?

コバユー: うんうんうん。

力石咲: だから、いつも、変なおもちゃ見つけたら、買って集めておく。そうすると、作品作るときにヒントになるでしょ?最後に、ポイントで面白いものプラスして作るのが好きで、宇宙服に空き缶つけたり、とにかく身の回りにあるものも、なんでもかんでも編みくるみたいし編みくるまれたいみたいな(笑)。


ライオンの鼻は、実は三菱のエンブレム。目もLEDで光ります。手袋にはコバユー菌が!

コバユー: どうして、毛糸で作品を作ろうと思ったんですか?

力石咲: たまたま帽子の編み方を教わったのがきかっけで…それから、ニットって自由自在で面白いなって。洋服とか縫い物だったら、型紙が必要だし、布を一回切っちゃったら終わりでしょ?でも、ニットは間違ったらほどけばいいし、針と毛糸があればどこでもできる。ちゃんと設計図作ったり、精度が求められるものは苦手だから、思うままにできるニットが自分に合ってるんだと思う。

コバユー: いきなり編みはじめちゃうの?

力石咲: そう。スケッチもあんまりしなくて、パッと浮かんだらまず手を動かしちゃう。今回の作品は先にスケッチを書いたけど。

コバユー: 今、咲ちゃんが着てるパンダの衣装は?

力石咲: うん、これもスケッチしてない。一応、パンダの写真は見たけど(笑)。

コバユー: 編んでる時ってどんな感覚?

力石咲: 感覚はねぇ…やっぱり、飽きるよ(笑)。ずーっと同じ作業でしょ?いっつもイスに座ってラジオ聞きながら編んでるんだけど、眠くなってくるの。そういう時は気分転換して、別の場所で編んだりするんだけど。いつも、「早く終われー!」って思いながらやってる(笑)。


力石さんのアトリエには、毛糸やニット制作の道具だけでなく、大きな電動工具なども置いてあります。

コバユー: 実はわたし、おばあちゃんが編み物の先生だったりして、編み物やったことはあるんだけど、すごいむずかしかったんだよね。なんか2本の、編み棒でやるやつ。途中で「あーん!わーん!」ってなっちゃった(笑)。

力石咲: あー、あれは難しいよね。わたしも出来ない(笑)。かぎ針は簡単だよ。わたしに最初に教えてくれた友達も「自己流だから、コレあってるかわからないけど…」って言われながら教わったの。でもね、こうやって形になればなんだっていいわけだもんね。そのやり方が、自己流だろうがね。

コバユー: その自己流で、見よう見まねで友達から教えてもらったのが、こんな全身スーツまで作れるようになっちゃったんですね。

力石咲: そうなんです。本当は編み物って奥深いもので、一番最初に考えた人もすごい!って思うけど、別に勉強しようとは思わない。必要だったら、その時は勉強するけど、知らない方が面白いことになったりするんだよね。

コバユー: あるあるある。

力石咲: だから、そういうところはすごく大事にしてる。でも、「こんなの間違ってる」とか言われたことある(笑)。すごい腹たったんだけど。

コバユー: 何を基準にしてるんだろうね。

力石咲: 間違ってないもんね、絶対。だって、わたしが作っているのは、あなたの教科書に載ってるソレとは違うから…って言い張ればね。なんだって間違ってないもんね。

コバユー: わたしも「レゲエっぽくない。」とか言われるよ(笑)。見た目とか声とか。でも、わたしも、そういう「レゲエっぽい」ものをマネしようとしてるわけじゃないしさ。なんか、似てるね(笑)。

力石咲: 似てるね(笑)。


おしりにつけるライオンの頭は、帽子としてかぶることもできます。

コバユー: 作品のアイデアを思いつく瞬間ってどういう時?

力石咲: えー、結構すぐ思いつくけどねぇ。瞬間…って言われてもあんまないかも。だって、すぐパッて思い浮かぶもん。

コバユー: この作品は?

力石咲: これは、「ライオン」って決める前からやりたかったから、返事はパッとして、その後じっくり、どうしようか考えたかな。でも、今回は、わりかしスケッチがうまく描けたと思って。わたし、絵が下手だから、スケッチ描くと自分の絵の下手さに萎えるの。それであんまりスケッチしないんだ、多分(笑)。


力石さんのスケッチ。

コバユー: そのスケッチ見て、魂の叫びを感じた。もう、キタキタキター!って、すごくテンション上がった(笑)。

力石咲: わたしも、今回はスケッチがわりかし上手くかけたなって思ったから、ますますノッた(笑)。アイデアはパッと浮かぶんだけど、例えばライオンの顔が頭じゃなくてお尻につくとか、そういうところはじっくり考えたかな。どうしても最初っから何にも浮かばない時はお風呂に入るとすぐ浮かぶ。

コバユー: ああ、わかる。私もそう。

力石咲: Coba-Uちゃんは、歌詞とかすぐ出てくる?書きためたりしてないの?

コバユー: してない。断片的な言葉はメモってたりするから、曲を作るときにそれをモチーフにすることはあるよ。メロディを先にもらった時、その曲を聴いて浮かんだ世界を言葉にすることもあるし。「ミラクルベリー☆」は、ミラクルベリーを初めて食べた時に、あの曲がポンッって生まれた。

力石咲: わたし、ミラクルベリーって食べ物が実際にあるの知らなかったんだよね。


いろんな話で盛り上がる2人。

コバユー: そう、それ聞きたかったんだ。咲ちゃんの中では、どういうイメージだったの?

力石咲: 最初に曲を聴いて、とりあえず、ライオンがすごくさみしそうだったの。さみしい存在で…でもあれって、ミラクルベリーを食べたら、活力が湧いて、前へ進むみたいな歌でしょ?で、なんか星とかも出てきて、まわりの人とか世界にも元気を与える存在?だからどっちかというとライオンが主役なんだけど、ベリーも主役みたいな。

コバユー:確かにこのニットスーツみると、ベリーが、ライオン引っ張って歩いてくみたいなイメージだよね。後ろにライオンの顔ついてるし。

力石咲: で、そのミラクルベリーって知らなくて、実際の世界にないものだと思ってたから、もう、なんか、ギラギラ光ったりとかしてて。色は絶対、酸っぱそうな、甘酸っぱそうな色なんだけど、とにかくなんか凄いんだろうな…っていう(笑)。

コバユー: ミラクルベリーは、すごく小さい実なんだけど、初めて食べた時、「こんな小さいのに、すごいことをするヤツがいる!」と(笑)。ミラクルベリー自体は淡泊な味で…。

力石咲: 酸っぱくないの?

コバユー: うん。その実自体は美味しくなくて、ちょっと時期外れで食べちゃったみたいな味がして(笑)。でも、ミラクルベリーを食べたあとに、酸っぱいものを食べると、すごく甘く感じるの。ミラクルベリーを食べる前は酸っぱかったはずのレモンが、めっちゃ甘くなっちゃって。

力石咲: へえー。ちょっと最初ビビるよね。

コバユー: そう。すごく小さくて、見た目も普通の木の実みたいな印象だったのに、一瞬でレインボーに輝いたの。私の中で。で、これすごい!って思って。こんなことあるんだ!って思って。で、あの曲が生まれたんだ。


パンダの力石さんと記念撮影。仲良しになってしまいました。

力石咲: おおー。ああ、レインボーかあ。

コバユー: そうそう。生きてるといろんな所で、そういうびっくりすることってあるんだけど、気付かないでいるよりは、そういうレインボーをいっぱい感じながら、人にも与えたりしながら過ごしていきたいなと思った瞬間だった。

力石咲: わたしの野望は、ニットで世界中を編み込むことなんだけど、今回は、衣装を作るっていうより、コバユーちゃんを編み込んだつもりなんです。

コバユー: ニットに、コバユーを編みこんだと。

力石咲: だからね、これでまた一つ達成。Coba-Uちゃんを編みこみました(笑)。なんかねやっぱり、ぬいぐるみとか一体作るよりも、もうすでにあるものを編み込んだ方が楽しいんだよね。それは人だったり物だったり空間でもなんでも。

コバユー: コバユーを編みこんでみて、どうでした?

力石咲: 楽しかった!楽しくて、でもちょっと緊張した。

コバユー: 一番苦労した部位はどこ?部位っていうか…。

力石咲:やっぱりベリーが大変だったかも。あとは、ライオンのほわほわつける時とかかなあ…。でもほんとに、これが完成して、ちゃんと着れることになったら、「コバユーちゃんを編みくるむってことになるんだ!」って思ったから、楽しくて(笑)。結構それが大きかったかも。

コバユー: わかった!征服欲あるでしょ?

力石咲: あ、あるかも(笑)。

コバユー: 解体して再生どころか、征服されちゃいました(笑)。

力石咲(ハイパーニットクリエイター)

「世界を編み包む」をミッションに、毛糸一本で世界征服をもくろむハイパーニットクリエイター。地球をニットで編みこんだ巨大作品『ManGlobe』が、第7回文化庁メディア芸術祭アート部門推薦作品に選出され、テレビ東京「たけしの誰でもピカソ」でも審査員特別賞を受賞。NHK「天才てれびくんMAX」の衣装制作なども手がけている。

ハイパーニットクリエイター力石咲 オフィシャルサイト


Photo&Text by トミモトリエ


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