今回、Coba-U(コバユー)のサードアルバム『un』の収録曲の中から、「ピエロ」を選んで、紙粘土のフィギュアとして再生してくれたデハラユキノリさん。いったいどんな意図で、どのように、このピエロが作られていったのでしょうか?デハラさんのアトリエにおじゃまして、色々とお話をうかがってきました。


コバユー: 今回は本当にありがとうございます。

デハラ: いえいえ、こちらこそありがとうございます。ピエロはね、作ったことなかったんですよ。フィギュアはもう何千個も作ってるので、だいたい「ああ、あのパターンね。」ってなるんですけど、実はピエロを作るのは初めてだったんです。

コバユー: えー!意外!!

デハラ: ピエロっていろんな人が作っていて、題材にしやすいものだから、あえて作ってなかったのかも。でも、作ってみたら面白かったですね。っていうか、ピエロってこわいよね。

コバユー: そこがいいんですよ。

デハラ: 中身人間やしね。

コバユー: 皮が薄い感じがしません?

デハラ: よーく見ると、ドキッとするね。白く塗ってるけど、おじさんが頑張ってやってると思うと…。

デハラユキノリ作「ピエロ」。かなり強そうな、黒いピエロです。

コバユー: 今回『un』を聴いて、どうしてこの曲を選んでくれたんでしょうか?

デハラ: まず、単純に音として好きっていうのと、ピエロってタイトルは、絵が浮かんできやすかったんで。漠然とした、もやもやしたものを作ってくれと言わると困るけど、「ピエロ」って言われてピエロ以外のもの作るほどへそ曲がりじゃないし(笑)。

コバユー: なんか、黒いピエロですけど。

デハラ: それは途中でどうしても黒いピエロにしたくなっちゃって。あと、ピエロって、ただ面白いとか、かわいらしいってだけじゃなくて、物悲しくてちょっと不気味なところがあるでしょ?作風としても作りやすかった。

コバユー: そう、デハラさんの作品は、シュールで、ちょっと物悲しいイメージ。だから、今回どんな作品が生まれてくるのかすごく楽しみにしてたんです。作るときは、すぐこの形状が浮かんでくるんですか?

デハラ: 実は作る前に色んなラフを描いてて…。

最初のラフ画はコバユーが小さなピエロを持っている図だった様子。

コバユー: 一番最初に浮かんだのはどれなんですか?

デハラ: まあ、最初は、本人を作った方がいいのかなっていう、ちょっと仕事寄りの考えで(笑)。それを一回逆にして、ピエロがコバユーをつかんでるやつにしたんだけど、これもなんか、仲悪そうだったんで。で、コバユーを肩に乗せてみたら、風景と一緒に撮るところまで想像できたというか。

コバユー: こっちの、青い方はいつ書いたんですか?

デハラ: これはまだ、最初の方に曲を聴いてるときに描きましたね。夜のイメージがあったんで。あれ?これ、傘もってるのかと思ったけど、よーく見たら包丁持ってますね(笑)。

コバユー: じゃあ、こっちが曲を聴いた率直なイメージってことですか?すごい。これは、わたしの思い描いてた世界にすごく近いです。ちょっと表現方法は違うけど、「ピエロ」のPVも、こんな感じの巨人ロボットが出てきて、一緒に踊ったり手のひらに乗ったりするんですよ。

デハラ: そうなの?というか、歌詞を書く時ってどうしてるんですか?出たまま書きたいような気もするけど、それじゃ伝わらないんじゃないかとか…、あるでしょ?

コバユー: わたしはそういうの一切考えないです。

デハラ: じゃあ、出たまんま?それにしてはまとまってるよね。

デハラさんのアトリエで、たくさんの作品に囲まれながらの対談。後ろのぬいぐるみは大人気のキャラ「めんた君」。

コバユー: なんだろう?パッと絵が浮かんで、夢を見てる感じ。その、自分が想像した世界の中に出てくる人だったり食べ物だったり、それをそのまま言葉に変換してるだけですね。

デハラ: そこに、うれしいとか悲しいとか、感情はくっついてくるの?

コバユー: 感情から絵になることもあるし、絵が最初に浮かんで後から感情が出てくることもあります。

デハラ: ピエロはどっち?

コバユー: ピエロは感情から入りました。さっきのデハラさんの絵、包丁持ってたけど、まさに、一人で夜のキッチンにいるときに「わたし一人ぼっちだ…」って思って。そしたら、テーブルの足にもたれて体育座りしてる女の子が浮かんできたんです。

デハラ: へー。そういうのって、いつから書き出したの?

コバユー: 最初は、小学校のころ。でも、実は文章は嫌いで…。

デハラ: 国語とか苦手だった?

コバユー: あ、国語は要領はよかったんですよ。わたし、漢字を絵みたいに見て、覚えちゃうんで。漢字とかめっちゃ点数よかった。

デハラ: それはすごいね(笑)。

今まで作ったいろんなフィギュアが飾られています。コバユーは「めんた君」がお気に入り。

コバユー: デハラさんはいろんな作品を作ってると思いますが、一番自分らしい作品ってどれですか?自分の内面出してるなとか。

デハラ: うーん、おじさんのサトシ君かもね。サトシ君は案外気持ち悪がられないんですよね。

コバユー: 気持ち悪いというより、守ってあげたくなる。そういうキャラですよね。

デハラ: あの、ちょっと聞きたいんですけど…、その感じ、なんなんですか?女の子が、実際のおじさんをかわいいって言わないくせに、絵とか人形になってると「かわいい」って言う、その現象。実際のおじさんをかわいがってほしい。

コバユー: えー、なんでだろう(笑)。多分、実際のおじさんは、息をしたり、しゃべったり、動いてるからダメ。この人は動いてないってところが、まず、無防備じゃないですか。

デハラ: ああ、おじさんって偉そうなのに、こいつは無防備だもんね。なでられてもしょうがないし。なんか、おんじさんの作品多いんですよ。学生のときからずっと、絵でも描いてたので。

コバユー: なんでおじさんなの?

真ん中に並んでいるのが「サトシ君」。48歳、身長168cm、70kg。妻にお荷物扱い、娘に毛嫌いされる中年サラリーマン。

デハラ: いやー、おじさんの、なんか物悲しい感じが好きで。とは言っても、学生のころなんて、おじさんに怒られたら「すんませんすんません」って言ってたはずで(笑)。馬鹿にしやすモチーフなんだけど、実際は怖いからやってしまってたのかもれない。

コバユー: 突然ですが、好きな色は何色ですか?

デハラ: ダントツでピンクが好きですね。ピンクを使いすぎてしまうんです、好きすぎて。だから、このピエロも、かなりおさえました。使いすぎると目立たなくなってしまうんで。

コバユー: いつから粘土をやってるんですか?

デハラ: 子供の頃みんなやったでしょ?

コバユー: うん、やった。でも途中でやらなくなった。デハラさんは子供の頃からずっとやり続けてるんですか?

デハラ: いや、やり続けてない(笑)。幼稚園くらいの時が一番燃えてたと思う。で、しばらくやってなくて、高校生の時に遊びでやってみたら楽しくて。でも人には言えない感じで(笑)。

コバユー: なんで?

デハラ: いや、あるでしょ?思春期の(笑)。家で紙粘土をこねてるのがばれたくないっていう。作品としては、絵の方をやってましたね。美大でも絵をやってた。その頃はイラストレーターになりたいと思ってたので。

学生の頃の絵を見せてもらうコバユー。自分でいろんな表情の写真を撮って、それを元にひらすら顔の絵を描いていたそうです。

コバユー: その頃はどんな絵を描いてたんですか?

デハラ: 血まみれのおじさんを描いてましたね(笑)。就職してからも休みの日は絵を描いて、「オレはまだ夢をあきらめてないんだ!」とか言って。でも、絵は大変なんですよね。粘土はこうやってこねてるだけで気持ちいいけど、チューブから絵の具を出すのって大した快感じゃないでしょ?気持ちよさにまかせて描くより、ここ曲がってるとこまっすぐしなきゃとか、技術的なところばかり難しく考えてた。

コバユー: 粘土で作品を作ろうと思ったきっかけは何だったんですか?

デハラ: 社会人になってから久しぶりに粘土やってみたら、異常に楽しくて。これじゃないかと。人に見せたら、絵を見せたときは「どうして血まみれのおじさんばっか描いてるの?」って、気持ち悪がられてたのに、立体だと「それ血が出てるけど、人形だったらましなんじゃない?」って言われて。

コバユー: えー!なんでだろう?

デハラ: 多分、粘土の丸みのマジックなんじゃないかと。で、東京に来て、色々売り込みに行ってたんですけど、担当の人が一応「絵もいいねー。」とか言うんですけど、あきらかに立体に食いついてるんですよ。「うーん、これはうちの仕事では使えないなー。」とか言いながらすっごい見てるんですよ。

で、これは非常に有利なものだと思って。あと、仕事では使えないけど興味は示すんだなってこともわかったから、展覧会したら作品自体は売れるので。運がよかったというか、自分の作りたいものが仕事になりましたね。

カイタイされて新たに生まれた「ピエロ」と一緒に記念撮影。

コバユー: デハラさんにとって粘土とは?

デハラ: あまり、仕事道具という風には考えてないですね。これは、遊び道具なので、飽きないんです。絵をこれくらいのペースで描けと言われたらしんどいけど、こねてるだけで楽しいので、素材自体が助けてくれますね。

コバユー: 壁に「いい仕事」って抱負が貼ってあるけど、デハラさんにとって「いい仕事」って?

デハラ: お金がいい仕事もそうだけど、普段作らない作品を、この仕事のおかげで作れるっていうのもいい仕事ですね。

コバユー: じゃあ、「いい遊び」は?

デハラ: いい遊びかあ…。それはもう、飲酒かな?飲酒以外に遊んでないかも。

コバユー: おじさんじゃないですか(笑)。

デハラ: いやー、仕事の方が遊びみたいだし。「じゃ、ちょっと、仕事あるんで。」って言うの、いまだにおかしいですもん。仕事って言って粘土こねてるわけだからね(笑)。

コバユー: それでは、最後に、コバユーを解体してみた感想を教えてください。

デハラ: 解体してみたけど、作ってるうちになんか、コバユーのことわかった気になってますね。ぼくの中のコバユーとは、かなり仲良いです。勝手に仲良くなってます(笑)。

コバユー: えー、うれしい!デハラさんみたいな粘土パパがいたら、毎日楽しそう。

デハラ: コバユーは、この作品見てどうでしたか?

コバユー: 強そうなピエロの肩に乗ったわたしは、無敵ですね。たまに、物悲しいことを言うピエロをなぐさめてあげながら、風に吹かれてどこか遠くに行くんだろうな。

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デハラユキノリ(フィギュアイラストレーター)

明治製菓『きのこの山』のCMキャラクターや、「いきものがかり」のCDジャケット、ケツメイシのHPなどでおなじみのフィギュアイラストレーター。フィギュアの年間制作数約300体、年間4~6回のペースで個展を開く。テレビ東京で『ケーキーズ』が放送されDVD化。著書は、フィギュア写真集『サトシ君のリストライフ』『ジバコレ』など。

デハラユキノリのフィギュアワールド



Coba-U「ピエロ」ミュージックビデオ

Photo & Text by トミモトリエ


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